SNSに苦情投稿があった場合の対応
公式ホームページでの謝罪・対応
近年は、不快な思いのSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)投稿が目立ってきています。
以前、ある居酒屋がツイッターで「ぼったくり」と投稿され、リツイートによって悪評が拡散、ついには閉店に追い込まれるケースがありました。
このように、投稿が企業の評判を左右するため、顧客のインスタやツイッターをチェックする「ソーシャル・マーケッター」の役職を設ける企業が増えつつあります。
もはやSNSでの評判は軽視できない時代なのです。
苦情の投稿を放置するのは危険であり、リスクの芽は早期に摘んでいくべきです。
基本的な対応のステップは対面や電話によるクレームと同じで、「迅速な事実確認」と「素早い対応」がポイントになります。
「芸能人の○○が□□と一緒に先ほど来店!」など、個人情報を社員がSNSで公開したり、「冷蔵庫ひんやりで気持ちいい」と業務遂行上の悪ふざけを動画で流すなど、社会的悪影響を及ぼすような場合は、公式ホ-ムページ上で謝罪し、今後の対応や企業姿勢を発表します。
発表はFacebookやツイッターなどのSNS上ではなく、公式ホームページで行う方がオフィシャルなものとして世間に認識されます。
お客様の主観であっても対応する
投稿された内容が「(味が)まずい」「(○○が)よくない」など、主観的なものであっても対応すべきです。
「お口に合わなかったようで申し訳ございません。今後はお好みに合うよう努力してまいります」と企業姿勢を伝えます。
このとき謝罪と同時に、必ず書き込みを取り下げてもらうようにしましょう。
虚偽投稿への対処
虚偽の苦情投稿の場合、多くの企業は放置する傾向にあります。
しかし、風評被害に発展する内容であれば、抗議だけでなく、名誉毀損で訴えることもできます。
近年は退職者が、会社の悪口を投稿するケースも散見され、経営者を悩ませています。
投稿内容が社外秘に触れるようなら、厳重に抗議すべきです。
そのためにも、会社としての許容範囲の線引きを取り決めておく必要があります。
投稿者の心理
投稿者はなぜSNSを利用するのでしょうか。
単純に解決を望むなら、直接申し立てをする方が早くて確実です。
それでもSNSを利用するのは、「知らせたい」「被害を自慢したい」という気持ちが働いているから。
つまり、承認欲求を満たしたいのです。
投稿の事実確認を受け、謝罪を受けると、あっさり投稿を取り下げる人が多いのもその証拠。
アピールしたい気持ちが満たされたからでしょう。
これがSNS時代のクレームの特徴です。
ここからも、早急な事実確認と謝罪が必要なことがわかります。
年代や役職を問わない社員研修が必須
SNSへの苦情投稿はお客様だけでなく、社員や元社員からも投稿されます。
20代~30代が中心と思われがちですが、実は50代~60代の投稿も多いのです。
20代~30代で多いのは、有名人の来店情報など、体験したことをおもしろおかしく投稿するケース。
企業の信用を失わせる安易な行動の社会的な影響については、組織として指導すべきでしょう。
一方、50代~60代は自分の会社を匿名で非難するケースが多いようです。
立場ある社員が会社を非難するのは、組織にとっても本人にとっても危険な行為です。
若年層の多くが、業務中にSNSを利用していて業務に支障をきたしているとの声もあります。
企業は、年代、役職を問わず、SNSの影響力を前提に、その扱いについての研修機会を設けるべきです。
年代ごとの社員の心理を考えた指導教育が大切で、監視ではなく、有効活用するように仕向けて行くことが重要です。
お客様からのクレームだけでなく、自社の社員の投稿が社会問題になることもある。
クレーム対応の全技術:全32回
第3回:クレーム原因は「品質不良」「接客態度」などの4つに集約される
第7回:クレーム解決のステップは「マナー」「聴く力」「話す力」
第9回:SNSに苦情投稿があった場合の対応
第11回:電子メールでのクレーム対応|LINEやメッセージアプリ対応法
第12回:お客様に合わせた臨機応変な対応がクレーム解決への早道
第16回:クレームの電話対応では「声のトーン」に変化をつける
第18回:柔らかい印象になる「クッション言葉」を使ってクレームを乗り切る
第19回:クレームは感情を逆なでする「否定表現」ではなく「肯定表現」を使う
第20回:「よろしかったでしょうか」「なるほど」「了解」はお客様を苛立たせる
第21回:「マジックフレーズ」でクレームに対応|誠実さの表現
第24回:クレームのゴールに向けての必須スキル「語尾の依頼形」
第26回:コンプライアンス無視で無理難題を言ってくるクレーム
第28回:お客様に問題があるのに無理難題を言ってくるクレーム
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お問合せはこちらマネジメントサポートグループ代表 古谷治子
東京放送、中国新聞社にて実務を経験。
その後、大学・短大等にて「就職支援講座」「ビジネス行動学」の講師を務める傍ら、心理学・カウンセリングを学ぶ。女性の自立を目的に開講した「マナーインストラクター養成講座」が雑誌等で取り上げられ話題となる。
出典:クレーム対応の全技術