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2019年10月9日 クレームの日特別イベントレポート(Part.1)

配信日:2019.10.17

『顧客の言い分、企業の言い分、変わるクレーム対応
〜悪質クレーム、インターネット、SNSなどで変わるクレーム対応、
今なにをすべきか〜』

去る10月9日、弊社制定『クレームの日』を記念した特別イベントを東京・三田の笹川記念館で開催いたしました。
当初は100席の定員を予定しておりましたが、大幅にオーバーするご応募をいただき、急遽150席まで席数を増やし、1社1名様での限定応募とさせていただきました。
多くのご応募、ご来場をいただき、誠にありがとうございました。

ご来場いただけなかった皆さまのためにも、ここにイベントの模様をレポートさせていただきます。

当日は、クレーム対応を取り巻く環境の変化と対応について、お二人の専門家にご講演をお願いしましたが、まずは弊社代表・古谷治子のご挨拶からスタートしました。

弊社代表・古谷治子

弊社が12年前に『クレームの日』を制定した経緯、消費者動向の変化に応じて、どのようにクレーム対応の研修を整備してきたか、また、昨年の『クレームの日』イベントについても簡単に振り返りました。
昨年はマーケティングの見地からの消費者動向や組織対応がテーマでしたが、今回、ポイントとしたのは“守り”です。
増える悪質クレームやSNSによる情報拡散などクレームを取り巻く環境の変化に対しては、組織や従業員を守るという観点がなければ顧客サービスを実現することはできません。
そこで、組織として打つべき手を考えるべく、『顧客の言い分、企業の言い分、変わるクレーム対応』というテーマを設けました。
このような趣旨のご紹介をご挨拶に代えて、いよいよ第一部の講演へ。

 

関西大学 社会学部教授の池内裕美先生

ご登壇いただいたのは関西大学 社会学部教授の池内裕美先生です。
池内先生はカスタマー・ハラスメント研究の第一人者であり、NHKの人気番組『クローズアップ現代+』など数多くのメディアにも登場されています。
今回は、『カスタマー・ハラスメントの現状と課題』と題して、理不尽な苦情に立ち向かうための方策について、次の5つのステップでお話しいただきました。

1 悪質クレーム(カスハラ)とは何か
2 クレーマーの特徴と苦情増加の心理的・社会的背景
3 苦情対応時の注意点
4 感情労働としての苦情対応
5 苦情コミュニケーションの課題(カスハラとどう向き合うべきか)

まずは悪質クレーム(カスハラ)とは何か? 昨今は社会問題にまで発展しているにもかかわらず正式な定義はなく、一般的には消費者からの著しい迷惑行為、理不尽な要求によるハラスメントがカスハラだとされています。
ポイントとしては、「普通のお客様なら受け入れること、ご理解いただける内容を拒絶する」、これが典型的な行動とのことでした。

関西大学 社会学部教授の池内裕美先生

では、なぜそんなクレームが増えているか、心理的、社会的背景の考察が次のステップです。
そもそもクレームはどんな感情から発生しているのでしょうか、特に悪質クレーマーの場合は社会的不満が高く、そうした不満のはけ口としてクレームにつながるケースも多いようです。また、急増する高齢者のクレームは、加齢による感情のコントロール能力の低下や、喪失体験に伴う孤独や不安といった感情が元になっている場合もあり、対応を考える以前に高齢者の心理を理解することが重要とのことでした。
そしてクレーム増加の社会的な背景としては、消費者の地位と権利意識の向上、企業への不信感の増大、SNSの普及、苦情への抵抗感の低下や過剰サービスによる期待など8つのポイントが挙げられました。これらを統合した苦情発生のメカニズムは、まさに不寛容社会の図式を浮き彫りにしていました。

そんな心理的、社会的背景を理解したところで、現場ではクレームにどう対応すべきかが3つめのステップです。
コミュニケーションでの注意点、NGワード・態度を学ぶことはもちろん、コミュニケーションにおいては互いに前提があり、先入観というバイアスがかかることも知っておきたいポイントでした。
これらを踏まえて、対応の流れ、各段階での注意事項と有効策、苦情者のタイプ別対応策をご紹介いただきました。
またここでは不当な要求を打ち切るグッバイマネジメント、SNSで炎上した場合の対応行動も示されました。

関西大学 社会学部教授の池内裕美先生

4つめは感情労働としての苦情対応です。
感情労働とは、「相手に適正な心の状態を喚起させるために表情や声や態度で演出することが求められる仕事」を指し、頭脳労働、肉体労働と並ぶ第三の労働の形態と言われるそうです。
要するに、苦情対応とは人を相手にする仕事であり、感情労働という演技力や共感的理解などのスキルが必要であること。ただし、感情労働にはストレスがつきものであるため、対応している自分自身にも思いやりを向けること。また、組織としては感情労働者へのストレス対策が必須です。
ここでは、従業員のストレスを軽減するいくつかの方法もご紹介いただきました。

最後は、カスハラとどう向き合うべきか。
クレーム対応をリスクマネジメントの一つとして捉え、苦情対応を組織で共有する方法やクレーム対応者のスキルや地位を向上させて従業員満足を高めるためのマーケティングなども紹介されました。
従業員満足は心の余裕とサービスの向上につながるものでもあり、クレームへの対応と同時進行で考えるべき課題です。

最後には法的な整備の必要性や国に求められる課題も示されました。
研究者としてのご見解に加えて、具体的な施策も数多くご紹介いただき、大変参考になるご講演でした。
池内先生、ありがとうございました。

 

Part.1はここまで。
第二部の弁護士、岡田卓巳先生のご講演についてはレポートPart.2でご紹介いたします。

 

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