おもてなしの3ステップ|「手伝う気持ち伝達」「ツールで案内」「お辞儀でお見送り」

「メイ アイ ヘルプ ユー」で気持ちを示す

おもてなしの最初のステップは「『お手伝いします』の意思表示をする」です。

これは、外国語が得意でなくてもできます。

困っている外国人のお客様を見かけて助けたいと思っても、最初のひと声が出ないことはありませんか。

また、お客様に声をかけられても外国語ができないからと尻込みしたり、声をかけられないようにお客様と物理的に距離を取ってしまうなんてことも。

これではお客様は困ったままですね。

大切なのは、困っている様子を見かけたら、こちらからアプローチして、「お手伝いします」と意思表示をすることなのです。

例えば、外国人の方に「エクスキューズ ミー(すみません)」と声をかけられたら、「メイ アイ ヘルプ ユー?」と返事をしてみましょう。

まずはこのひと言で、「あなたの力になりますよ」との姿勢を見せるのです。

相手から声をかけられなくても、お困りの様子の方には「メイ アイ ヘルプ ユー?」と声をかけるのもおもてなしの第一歩

相手が「ウィ ウォント トゥ ゴー トゥ トーキョースカイツリー(東京スカイツリーに行きたい)」などと英語で用件を伝えてきたら、相手とは英語で話せばいいことがわかります。

また、中国語で答えてきたら、中国語の対応が必要になることがわかります。

まずは、「お手伝いします」の意思表示をすること。

積極的にお声がけや挨拶をすれば、コミュニケーションが始まって、お客様の母国語が想像ができますね。

 

ツールを使ってご案内する

ここからはステップ2「ツールを使ってご案内する」です。

具体的なプロセスは「言語を確定する」「目的をうかがう」「ニーズを聞く」「ご案内する」の4つです。

いよいよ外国人のお客様との会話が始まりますが、決して難しくありません。

ステップ2は、「英語でのコミュニケーション」と「英語以外でのコミュニケーション」の2パターンに大別されます。

「メイ アイ ヘルプ ユー?」と声をかけて英語で答えが返ってきたら、「英語でのコミュニケーション」です。

カタコト英語だったとしても、英語でのコミュニケーションになります。

もし、お客様がとても流暢な英語で話しかけてきた場合は、「アイム ソーリー アイキャント スピーク イングリッシュ ソー ウェル(すみません。あまり英語が得意ではないのですが)」とひと言断りを入れましょう。

お客様が流暢に話しかけてきても、無理にそれに合わせる必要はありません。

会話に必要な簡単なフレーズを覚えておき、自分のペースで会話を進めれば大丈夫です。

「メイ アイ ヘルプ ユー?」と声をかけて英語以外の言葉で答えが返ってきた場合は「英語以外でのコミュニケーション」です。

この場合、英語、中国の簡体字・繁体字、韓国語、スペイン語など、さまざまな言語で書かれたパンフレットやお助けツールを見せて、お客様がわかるものを選んでもらい、コミュニケーションを取る言語を確定します。

言語が決まったら、道案内をしてほしいなど、お客様の目的をうかがい、どこに行きたいかといったニーズを聞いて、ご案内します。

ステップ2の各プロセスでは、簡単なフレーズ、筆談、ジェスチャー、そしてお助けツールの4つを使ってコミュニケーションを進めます。

 

ヴィジュアル化する便利ツールを使う

地図を使う

ステップ2で使う三種の神器のひとつの「お助けツール」とは、既成の地図や各国の言語で書かれたパンフレット、チョイスボード、メモ帳など、コミュニケーションの助けになるものです

今ならスマートフォンやタブレット端末で代用することもできます。

こうしたツールは、実は、外国人観光客のお困りごとの解決に大いに役立つ味方です。

例えば、銀座の街中で困っている様子の外国人がいたので「メイ アイ ヘルプ ユー?」と声をかけてみました。

すると、相手の方が「ウィ ウォント トゥ ゴー トゥカブキザ」と言ったとしましょう。

「カブキザ」という単語が聞き取れたので「歌舞伎座に行きたいのかな」と見当がつきますね。

ここでお助けツールの出番です。

相手が持っている地図を見せてもらい、印をつけていいかジェスチャーで伝えて了承を得たら、「ユー アー ヒア ナウ(今ここにいます)」と、今いる場所にペンで丸をつけます。

それから「プリーズ ゴー ストレートアンド ターン レフト ヒア(まっすぐ行って、ここを左に曲がってください)」と言って、目的地にもペンで丸をつければ道案内ができてしまいます。

覚えておくべきフレーズはたった2つだけです。

地図で伝えるときのポイントは、現在地をはっきりと示すこと。

もちろん、目的地にも同じように印を忘れずに

曲がる交差点もペンで丸囲みにすると親切ですね。

このようにツールがあれば、複雑な会話を交わさなくても、「簡単なフレーズ」だけで案内できます

地図やパンフレットは観光案内所や駅で配られている既成のものでかまいません。

さらに、チョイスボードなどのツールを活用して、積極的におもてなしをしてみましょう。

道案内には地図が、乗り換え案内には路線図が、お助けツールとして活躍します。

地図や路線図はスマートフォンのアプリでも問題ありません。

チョイスボードを使う

チョイスボードの作成例画像

店舗では、外国人のお客様によく聞かれる項目をまとめた「チョイスボード」を用意しておくと便利です

チョイスボードとは、ボードに書かれた項目を指さすことで、簡単なコミュニケーションが取れるツールです。

例えば家電量販店なら、外国人に人気の「テレビ」「スマートフォン」「カメラ」「パソコン」「炊飯器」といった商品をイラストなどで一覧にします。

「はい」「いいえ」「右」「左」など、意思表示やご案内でよく使うフレーズもチョイスボードに入れておくと便利です。

「1」から「10」までの数字や「?」の記号などは、発音は違っても万国共通です。

探し物が見つからないのか、迷っていそうなお客様がいたら、「メイ アイ ヘルプ ユー?」と言って、チョイスボードを見せましょう。

英語と中国語で「何をお探しですか?」と書いておき、こちらから質問を指し示してもいいでしょう。

お客様が探している商品を指さしたら、売り場をご案内します。

業種や店舗ごとにご案内でよく使うフレーズや人気商品をチョイスボードにまとめておくと役立ちます。

お客様のお困りごとを聞くときも、私たちがご案内するときも簡単に意思表示ができるようになり、複雑な会話なしでも、コミュニケーションができるのです。

大きなジェスチャーで伝える

ステップ2で大切なのは、わかりやすくご案内することです。

ご案内しているとき、とっさに言葉が出てこなければジェスチャーで構いません。

でも残念なことに、日本人は身振り手振りが小さくなりがち。

オーバーリアクションかと思うくらいが、ちょうどいいジェスチャーの大きさです

場所をご案内するときは、指し示す手をしっかり止めるようにしましょう。

例えば、店内でトイレの場所を聞かれたときは、「オーバー ゼア(あちらです)」と言って、手でトイレの方向を示します。

このときに多いのが、「オーバー ゼア」と言ったと同時に手を下ろしてしまうパターン。

動作が早すぎるとお客様は示された方向を把握しきれません。

必ず、お客様が手の方向を見たことを確認してから、ゆっくりと手を下ろすようにしましょう。

方向を示すときの手は、指を揃え、手のひらを上に向けるときれいに見えます。

距離感は、ひじの曲げ方で表現します。

ひじをまっすぐ伸ばすと遠くにあることがわかりますし、近くにあるものを指すときはひじを曲げて表現します。

ジェスチャーで伝えるなら、恥ずかしがらないことも大切です。

「バイ ウォーク(徒歩で)」というフレーズが出てこなかったら、大げさなくらい大きく両手を振って、元気に歩いている表現を。

「レジスター(レジ)」という単語を忘れたときは、左右の手で大きくレジを打っている様子を示します。

ジェスチャーのときは笑顔も忘れずに。

 

最後にひと言添える

簡単な言葉を添える

3つ目のステップは「最後にひと言添える」です。

人との関係では、第一印象が大切といわれますが、実は、最初だけでなく、別れ際の印象も非常に大切です

例えば、知人たちと食事して楽しい時間を過ごしていたとき。

ひとりが挨拶もなく帰ってしまったら、その場の雰囲気もしらけてしまうでしょう。

一方、「楽しかったです。また会いましょう。お元気で!」と言って、笑顔で手を振りながら帰ったら、見送ったあとも気持ちよく過ごせるはずです。

「最後にひと言添える」ことが、おもてなしではとても大切なのです。

簡単なお見送りのひと言を付け加えると、お客様が受ける印象が変わってきます

お客様をご案内したあと、「グッバイ」の挨拶だけではなく、「プリーズ テイクケア(お気をつけて)」「ハヴ ア ナイス トリップ(よい旅を)」など。

中国語なら、「イールーゾゥハォ(お気をつけて)」「リゥトゥユゥコァイ(よい旅を)」などの言葉を添えましょう。

外国のお客様にとって、日本人が母国語で見送ってくれるのは、大切にされていると感じるもの

歓待の気持ちを込めて、お客様の母国語で見送る心遣いが、温かい思い出として残ります。

美しいおじぎでお見送り

海外では、おじぎのように体をかがめる挨拶はあまりありません。

しかし、映画などを通じて、日本のおじぎは海外でもよく知られるようになってきました。

日本のおじぎは美しい立ち居振る舞いとして見られています。

おじぎに込められた相手への敬意は、おじぎの習慣のない海外の人にも伝わっているのです。

お客様を見送るときの流れは、最初にアイコンタクトをとり、五分咲きの笑顔にお客様を思いやる言葉を添えて、そのあとにおじぎをします。

そして、お客様が見えなくなるまで手を振って見送ります。

このとき、語先後礼(ごせんごれい)で、言葉をかけてからおじぎをするのが美しい所作です。

「プリーズ テイク ケア」と言ったあとにゆっくりとおじぎをしましょう。

日本らしいお見送りの姿が、きっと外国人のお客様の心に残るはずです。

古谷治子 写真

マネジメントサポートグループ代表 古谷治子
東京放送、中国新聞社にて9年間実務を経験。
その後、大学・短大等にて「就職支援講座」「ビジネス行動学」の講師を務める傍ら、心理学・カウンセリングを学ぶ。女性の自立を目的に開講した「マナーインストラクター養成講座」が雑誌等で取り上げられ話題となる。


出典:簡単だから伝わる!語学力要らずの3ステップおもてなし術

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